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従業員から退職を申し出る場合、退職理由は「自己都合退職」であり、「解雇」を希望するというのは、それ自体が不自然な話です。しかしながら、そのような申し出をされる事業主の方は少なくありません。
これは退職理由によって失業給付(雇用保険の求職者給付の基本手当)の受給開始時期、及び受給できる日数(所定給付日数)が異なるためで、自己都合退職よりも解雇の方が有利となるためです。【基本手当の受給開始時期】退職理由が解雇の場合、ハローワークにて申請手続き後、実際に銀行口座に振り込まれるのは約1か月後となります。退職理由が自己都合退職の場合は、積極的な就職活動を促すため、2か月間の給付制限期間が設けられており、約3か月後からの支給となります。【基本手当の所定給付日数】1.解雇・会社の倒産など年齢、被保険者期間に応じて90日から330日2.自己都合退職被保険者期間に応じて 90日から150日解雇扱いとすることで退職者に有利になり、助成金を申請しないのであれば、会社に不利益がないようにも考えられますが、雇用保険手続きにあたり、本当の退職理由を記入しなければ違法になります。さらに解雇にしたことにより、退職者から不当解雇を主張される可能性があります。裁判となると、期間中の賃金支払義務が発生し、慰謝料を請求されることもあります。本来の退職理由が自己都合退職の場合は、解雇にしてほしいという従業員からの交渉には応じないようにしてください。またその際には、退職届を提出してもらうようにしてください。
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加古川・姫路の社会保険労務士は山本社会保険労務士事務 -
政府は2023年12月22日の閣議で、今の健康保険証を来年、2024年12月2日に廃止することを正式に決めました。廃止後も最長1年間は猶予期間として今の保険証が利用できるほか、「マイナ保険証」を持っていない人には代わりとなる「資格確認書」を発行するとしています。まだ詳しいことは分かっておりませんが、現状の健康保険証は、上記より2025年12月までは発行されると予想します。マイナ保険証になることで、現行の健康保険証に関する作業が削減されます。行政は、カード作成、発送作業を行う窓口の工数およびカード回収破棄の工数が削減されます。会社では、保険証が会社に届いた後、各従業員へ手渡しもしくは郵送のコスト、保険証が会社に届くまでに病院行きたいとなった時の緊急の保険証代替証明の発行、また退職時の本人及び扶養者分の保険証を回収して、役所へ郵送費用及び工数。保険証無くした際の対応工数などが無くなりますので、行政も会社も助かります。日々時間と勝負されている経営者からすると、「遅いな」という感想を持たれる方が多いかと思いますが、やはり個人情報の問題が関係し、役所という大きな組織のルールを変更するのは、強いリーダーシップが必要ですので、やはり難しく時間がかかるものと考えます。入社して1日で退職してしまった従業員様分も保険証カードが郵送されてきて、すぐに郵送での返却が全国で発生していることを考えると、少し未来の人からすると、今の状態が可笑しいことに映るかもしれません。
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いわゆる「年収の壁」の解消に向けて、パート・アルバイトで働く方の年収が一定水準を超えても、手取り収入が減らない、もしくは、引き続き配偶者の扶養に入ることができるなどの対策「年収の壁・支援強化パッケージ」が今年10月から実施されています。「人手不足で仕事はあるのに、パート従業員が、年金・健康保険の保険料支払いのことを考えて、働く時間を調整している。」「最低賃金の上昇により、さらに労働時間が短くなった。」このような悩みを持っている事業所は多いのではないでしょうか?2022年9月の調査では、パートタイム・アルバイトとして働く全国の20歳から69歳の女性のうち、61.9%が「就業時間や日数を調整している」と回答しており、59.4%が「時給の上昇により以前より就業調整をせざるを得なくなったと感じた経験がある」と回答しています。
以下、「年収の壁」・「パッケージ」の内容や、変更点・注意すべきことについて記載します。
【「年収の壁」とは】厚生年金保険及び健康保険において、会社員の配偶者等で一定の収入がない方は、被扶養者(第3号被保険者)として、社会保険料の負担が発生しません。こうした方の収入が増加して一定の収入を超えると、社会保険料の負担が発生し、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的で就業調整する方がいます。その収入基準(年収換算106 万円や 130 万円)がいわゆる「年収の壁」と呼ばれています。・従業員100人超の企業に勤務する場合:106万円※「従業員100人超企業に週20時間以上で勤務する場合」は、所定内賃金が月額8.8万円以上(年収約106万円)になると厚生年金保険等に加入。・従業員100人以下の企業に勤務する場合:130万円※「従業員100人以下の企業に勤務する場合」は、所定労働時間および所定労働日がフルタイムの4分の3以上になると厚生年金保険等に加入、所定労働時間および所定労働日が4分の3未満で年収130万円以上の場合は国民年金・国民健康保険に加入。※「従業員100人超」は令和6年10月以降は50人超になります。 -
飲酒運転による交通事故は年間全国約2,200件(毎日約6件)に上り、このうち死亡事故120件(3日に1人死亡)発生とのことです(警察庁Webサイトより)。飲酒運転による痛ましい事故はなくならず、警察庁は有償で荷物や人を運ぶ「緑ナンバー」へ適用していた点呼やアルコールチェックを、白ナンバー車でも一定台数保有する企業にも義務化拡大を決定。2022年4月に法改正されました。当初、2022年10月から予定されていた「アルコールチェッカーによる酒気帯び確認」は、アルコール検知器の供給が間に合わないことから当分の間延期されていましたが、2023年12月1日から義務化されます。アルコールチェック義務化対象企業は以下のいずれかに該当する事業所です。・ 乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保持する企業・ 白ナンバー車5台以上を保持する企業※オートバイは0.5台として換算※それぞれ1事業所あたりの台数お酒を飲んでの運転は、都心で電車を中心に生活されている方やお酒を飲まない方はもちろんのこと、一般生活において考えられないことです。先述の「義務化の対応となる事業所」の基準から、この法改正によって、アルコール検知器の購入を余儀なくされ、確認の記録を1年間保存しなければならない事業所の数は、非常に多いです。「昔は当たり前だったし大丈夫」と非常に危険な思想を持たれている方も極少数いらっしゃると思います。コロナも収束傾向の今、その方に付き添って飲みに行かれる方もいらっしゃると思います。経営者として、事業と関係のない経費を使わなけれならず、悔しいばかりかと思いますが、これにてアルコール検知を行わず、飲酒運転の事故を起こした場合は、事業の信用を失墜が必至となるため、当事者意識を持ち、皆で事故を未然に防ぎたいところです。
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つながらない権利とは、勤務時間外や休日に、仕事上のメールや電話への対応を拒否する権利のことです。中小企業においては猶更、耳の痛い話と感じられる経営者は多いのではないでしょうか?2017年にフランスが施行した改正労働法であり世界各国で法整備が進んでいます。スマホにて、いつでもどこでも仕事の連絡がくる時代ですし、フレックスタイムやテレワーク等で労働と生活の判断が付きにくい時代となっております。この背景から、時間外や休日を問わず業務上の対応を迫られ、体調を崩してしまう人が増えていると言われています。また、業務時間外や休日への不要な干渉は、ハラスメントにも繋がるとされています。といっても、得意先(顧客)からは、関係なく電話は鳴るし連絡は来ます。対応しないことで大事な収入源が減少してしまうのではないかという不安は、起業というマイナススタートから、なんとかプラスに持ってこられた経営者であれば、必ず感じられるものと思います。一方、人材確保(定着)がままならない状況では、次の一手が打てないという経営者も多くなっております。日本では、まだ法整備までに至っておりませんが、休日の電話やメール対応等も業務ですので、少ない時間でも労働時間分の賃金(割増賃金含む)の支払いの義務が発生することは御想像の通りです。求人を出せば、すぐに人材が確保できる時代ではありませんので、離職やトラブルにつながる原因は、少ない方が良いです。【当てはまったら要注意!】・ 従業員に対し、電話、LINEやメールなどで時間を問わず連絡することがあり、返事を強している・休日でも従業員に電話を掛けて不急の対応をさせる・メールなどに即座に返信しなければペナルティを課す
上記の様な対応をされていると、従業員は「休日や業務外に会社から連絡が来ると、動悸がするようになった」「会社からの連絡が気になり眠れない」等に発展し、従業員の近しい方にご本人が相談した際、「辞めた方が良い」と言う流れになります。直ぐに離職となるか、うつ病診断からの長期休職を経て、トラブルを抱え離職となるかはわかりませんが、好ましい状況ではありません。対応方法としては、①得意先(顧客)に営業時間を理解してもらい、業務外対応は、極力しない習慣をつける。②業務の属人化を解消し、誰でも対応できる業務を増やす。③情報漏洩の観点からも、社内ルールとして会社スマホを持ち返らない。個人用スマホで業務を行わないことを決める。④即時反応を武器にするのではなく、他の強みを伸ばす 等が挙げられます。日本でもつながらない権利について法改正となった場合は、得意先(顧客)にも説明し易く、それをきっかけに対応できるのですが、実際に従業員が気を病み、いざ離職するということになってから手をつけるとなると、混乱が予想されますので早めの対応をお勧めします。
なお医療介護などの業種の中にはオンコールと言われる電話当番業務がありますが、この業務については諸条件がありますが、業務ではないと判断されることがあります。この点の仔細の必要であれば弊社担当お問い合わせください。