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大企業と比べ中小企業では、福利厚生の充実が、どうしても後回しになりがちです。しかし就職・転職活動時に多くの方が重視する項目です。今回は福利厚生を充実させる施策の一つとして、従業員が加入する「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」に、事業主が上乗せして拠出する中小企業向けの制度「iDeCo+(イデコプラス)」などの確定拠出年金について記載します。
◆確定拠出年金とは
確定拠出年金は、拠出した掛金とその運用益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度で、掛金を加入者自身が拠出するiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)と、事業主が拠出する企業型DC(企業型確定拠出年金)があります。
◆「iDeCo(イデコ)」
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は確定拠出年金法に基づき60歳以降に公的年金にプラスして受け取ることができる私的年金で、加入中および給付を受けるときに税制上の優遇措置が講じられています。
◆iDeCoの3つの税制メリット
(1)加入者の掛金が全額所得控除の対象となり、
所得税・住民税が軽減
(2)運用益も非課税で再投資される
(3)年金の場合は「公的年金控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となり、受け取る際の控除が大きい
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従業員が入社する際の書類について
令和5年度が始まり、新入社員を迎えられる事業所も多いと思います。今回は改めて入社時の必要書類などについて記載いたします。
◆従業員に用意していただくものの1例
・マイナンバー
社会保険や労働保険などの各種保険や税金の手続きに必要となります。扶養家族がいる場合は、本人以外に扶養家族のマイナンバーも必要です。マイナンバーは特定個人情報にあたるため、情報管理には注意が必要で、万が一漏洩した場合には罰則が課されます。
・履歴書
住所、氏名(漢字・フリガナ)、生年月日、扶養者の有無、職歴の確認などに利用します。
・健康診断書
労働安全衛生規則第43条により、常時使用する労働者を雇い入れるとき、医師による健康診断を行う義務があります。労働者が3か月以内に受けた健康診断の結果を証明する書面を提出する場合は、雇い入れ時の健康診断を省略することができます。
・雇用保険被保険者証
雇用保険資格取得手続きに利用します。加入履歴があれば、パート・アルバイトなどでも雇用保険番号は付与されています。加入していたが番号が不明な場合、履歴書の職歴等を参考にハローワークで検索します。初めて雇用保険に加入する場合には、新たな番号の被保険者証が発行されます。
・源泉徴収票
前職があり、入社した年の1月以降の収入がある場合に提出してもらいます。年末調整に必要となります。
◆会社が用意して従業員に提出いただくもの
・扶養控除等申告書
税金の被扶養者の確認に利用します。社会保険の扶養の参考にも利用します。扶養者の有無にかかわらず必要となります。
労働基準法第15条第1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定されています。明示すべき事項は、以下の通りです。
(1)労働契約の期間
(2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
(更新することがある契約の時)
(3)就業の場所および従業すべき業務
(4)始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働 者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換
(5)賃金(退職手当等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給
(6)退職(解雇の事由を含む)
(7)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び退職手当の支払いの方法並びに支払いの時期
(8)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与その他これに準ずるもの並びに最低賃金額
(9)労働者に負担させるべき食費、作業用品等
(10)安全及び衛生
(11)職業訓練
(12)災害補償及び業務外の傷病扶助
(13)表彰及び制裁
(14)休職
この内(1)から(6)については書面の交付により明示が必要。((5)の昇給に関する事項を除く)以上の内容を記載したものが労働条件通知書で、雇用主が署名または記名押印し、従業員に交付するものです。内容はほぼ一緒ですが雇用契約書もあります。雇用契約書は雇用主と従業員が署名または記名押印し、双方が1部ずつ保管するものです。認識相違によるトラブル防止、合意確認のため、可能であれば雇用契約書を交わしておく方がよいと思います。
あわせて、社会保険、雇用保険加入の手続きもお忘れのないようお願いします。
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加古川・姫路の社会保険労務士は山本社会保険労務士事務 -
◆労使(労働)慣行について
労使慣行とは、企業社会一般又は当該企業において、一定の事実が相当期間にわたり継続して行われ、これに従うことが労使双方で当然とされている場合をいいます。例えば、退職金の支給に関し、退職金規程はないが、これまでわずかの例外を除いて退職者全員に退職金が支給され、支給基準も同一であった場合は、退職金支給の労使慣行が成立していると判示されています(宍戸商会事件・東京地判昭和48年2月27日)。そして、労使慣行は、公序良俗や強行規定に反する場合は法的効力が認められませんが(法の適用に関する通則法第3条、民法第92条参照)、それ以外は法的効力が認められ、具体的には、労働契約の内容となったり、就業規則又は労働協約の解釈基準として、その内容を補充したり、具体化する役割を演じることになります。
そこで、見解は分かれるのですが、最近の裁判例は、労使慣行の成立には次の三つの条件を満たすことが必要との考えに立っています(東京中央郵便局事件・東京地判平成3年8月7日など)。
①同種の行為又は事実が長期間反復継続して行われていること
②当事者がこれに従うことを明示的に排斥していないこと
③当該労働条件についてその内容を決定し得る権限を有し、又はその取り扱いについて一定の裁量権を有する者が、これに従うことを当然としている(これを規範と考えている)こと
【広島県雇用労働情報サイトわーくわくネットひろしま より】
◆まとめ
皆さんの事業所においても、上記要件①~③を充たした場合、当事者が気付かないうちに労使慣行が成立してしまう可能性があります。
そこで、そのような労使慣行の成立を阻止するため、就業規則等に定めていない「今回限りの特別臨時措置」であったり、「事業所内の一部部門のみの暫定処理」を行う場合には、その旨を明確化した上、上記要件①~③を充たさないよう留意する必要があります。
仮に、事業所内にルール(就業規則等)がなかったり、あったとしても内容が不明確な場合、労使慣行が成立する可能性が高くなります。そのため、日々の事前防止策として、自社の就業規則等を整備し、労使慣行となり得るものを減らしていくことが肝要です。
もし、就業規則等の整備にお困りでしたら、ぜひ弊所へお声掛けください。事業所の秩序を維持するため、働きやすい職場として良い人材を確保するため、目的は様々ございますが、それぞれの事業所に適した就業規則等の作成をお手伝いさせていただきますので、何卒よろしくお願い致します。
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令和5年4月1日より、雇用保険料率が上がります
昨年10月1日に上がったばかりの雇用保険料率が、今年の4月1日、更に上がることとなります。
<令和5年度の雇用保険料率>(赤字は変更部分)
事業の種類
労働者負担
事業主負担
合計
一般の事業
6/1,000
9.5/1,000
15.5/1,000
農林水産・清酒製造の事業 ※
7/1,000
10.5/1,000
17.5/1,000
建設の事業
7/1,000
11.5/1,000
18.5/1,000
※園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については一般の事業の率が適用されます。(参考:厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内」一部抜粋
令和5年3月分(4月納付分)より、健康保険料率、介護保険料率が上がります
協会けんぽ兵庫支部の健康・介護保険料率が以下のとおり変更となります。(赤字は変更部分)
【健康保険料率(兵庫支部)】
(現行)10.13%→(令和5年3月分〜)10.17%
【介護保険料率(全国一律)】
(現行)1.64%→(令和5年3月分〜)1.82%
※40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)は、健康保険料率に介護保険料率が加わります。
(参考:協会けんぽ「令和5年度保険料額表」)
兵庫県以外の事業主様は、協会けんぽHPで健康保険料率をご確認ください。
協会けんぽ 令和5年度保険料額表URL:
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r05/r5ryougakuhyou3gatukara/
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これまで大企業にのみ適用されてきた月60時間を超える時間外労働に対する割増加算率50%以上が、令和5年4月1日からは中小企業にも適用される予定です。昨年6月号にも記載しましたが、再掲です。
◆対象となる時間外労働とは?
時間外労働の対象となるのは、法定労働時間(1日8時間、週40時間※)を超えた時間です。そして、その時間の累計が、1か月60時間を超えた場合に50%以上の割増賃金が必要となります。
※常時使用する労働者が10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業及び接客娯楽業の事業場は週44時間令和5年4月1日以降の割増賃金(中小企業)
対象となる労働
割増率
時間外労働 月60時間※以下
25%以上
深夜労働(22時~翌5時)
25%以上
月60時間を超える時間外労働
50%以上
法定休日労働
35%以上
※月45時間を超える部分については、25%を上回る割増賃金とするよう努力義務があります。
上記の月60時間には、法定休日の労働は含みません。法定休日とは、使用者の義務である1週間に1日または4週間に4日の休日のことで、この休日に労働させた場合は35%以上の割増賃金を支払う必要があります。
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