毎月、給与から控除されている社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)は、各人ごとの給与から決定された標準報酬月額をもとに計算されています。この標準報酬月額は、労働者が受け取る報酬(基本給のほか時間外手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で1~50(厚生年金は1~32)等級に区分したもので、実際の報酬と大きくかけ離れないように毎年見直されます。等級の見直しには、定時決定、随時改定、育児休業終了後の改定、資格取得時決定がありますが、本誌面では、定時決定と随時改定について説明します。
◆ 定時決定(算定基礎届)
年に1度、7月に標準報酬月額の等級を見直して、9月から翌8月までの1年間の社会保険料を決定します。この標準報酬月額の見直しを、「算定」あるいは「定時決定」といい、7月10日までに届出を行う必要があります。
〈算定方法〉
4月、5月、6月に支払われた3か月分の報酬を合計した後、1か月の平均を計算し、標準報酬月額の等級に当てはめます。報酬は社会保険料等を控除する前の総支給の金額で、時間外手当等も含みます。また、欠勤が合った場合は欠勤控除された後の金額をもとに計算します。
〈提出対象者〉
7月1日時点で健康保険・厚生年金保険の被保険者である者の内、下記の者を除いた者です。
① 6月1日~7月1日の間に被保険者の資格を取得した者。 ※資格取得時決定の対象
② 7月~9月の間に標準報酬月額の改定が行われた者。 ※随時改定の対象
◆ 随時改定(月額変更届)
被保険者の報酬が、昇(降)給など固定的賃金の変更に伴い、大幅に変動したときは、その都度標準報酬月額を見直します。固定的賃金とは、基本給や資格手当等の毎月固定で支払われる賃金を指します。固定的賃金に対し、毎月変動する時間外手当や歩合給等は非固定的賃金と呼びます。随時改定を行うのは、この固定的賃金に変動があったとき、時給から月給等給与体系の変更があったとき、新たな手当を創設したときなどです。さらに、次の3要件をすべて満たしている必要があります。
〈要 件〉
① 昇(降)給により、固定的賃金に変動がある。または給与体系の変更や、新たな手当の創設があり、その支給を受けている。
② 固定的賃金の変動月以降3か月間の支払基礎日数※が全て17日以上ある。
③ 上記変動月以降3か月間の総報酬額の平均額を計算した額による標準報酬月額の等級と、現在の等級との間に2等級以上の差がある。
※支払基礎日数とは、報酬の基礎となる日数のことで、日給、日給月給の場合は出勤日数、完全月給の場合は、暦日数となります。また、月平均所定労働日数をもとに欠勤控除を行う場合は、月平均所定労働日数から欠勤日数を引いた日数となります。
〈改定時期〉
変更後の報酬を初めて受けた月から起算して、4か月目の標準報酬月額から改定します。
例)末締翌10日払 4月1日昇給の場合
昇給後の給与支払い 5/10、6/10、7/10
標準報酬月額の改定 8月
変更後の給与支払い 9/10支払いから変更
<変更後の有効期間>
・改定月が1月~6月 →その年の8月まで
・改定月が7月~12月 →翌年8月まで
◆「定時決定」と「随時改定」の関係
7月~9月に随時改定がある場合は、定時決定を行わず、随時改定を優先します。随時改定で決定された標準報酬月額が、翌年8月まで適用されます。
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加古川・姫路の社会保険労務士は山本社会保険労務士事務所
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