勤続10年、20年などの従業員を表彰し、報奨金を支給する際、課税されるのかどうか、また労働保険料や社会保険料の支払が必要なのかどうかという質問を受けることがありますので、以下、このポイントについて法律の定めを軸に記載します。
1.現金支給は課税となる
永年勤続の表彰に当たって支給する記念品の支給や旅行、観劇の招待などは一定要件のもと給与として課税しなくてもよいことになっています。
ただし現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券は券面額)が給与として課税されます。
① 勤続年数や地位などに照らして、社会一般的に見て相当な金額以内であること
② 勤続年数が概ね10年以上の人を対象としていること
③ 同じ人を2回表彰する場合には、前に表彰してからおおむね5年以上の間隔があいていること
(国税庁ホームページより)
2.労働保険料の支払いは不要
永年勤続報奨金は、就業規則・労働協約等の定めのありとなしを問わず、労働保険対象の賃金とされず、保険料の支払いは不要となります。
・その他労働保険対象賃金としないもの
結婚祝い金・死亡弔慰金・災害見舞金・退職金等
(厚生労働省ホームページより)
3.社会保険料の支払いは不要
永年勤続報奨金は、一定の条件を満たす場合、社会保険対象の報酬に含まれず、保険料の支払いは不要。
・社会保険料計算の対象外となる表彰金の条件
① 一定の勤続年数に達した際に、労働の内容に関わりなく一律に支払われるもの(概ね10年ごと)
② 表彰金が社会通念上の祝い金の範囲を超えない
③ 誠実に勤務した労働者に恩恵的に支払われる
④ 賃金・賞与でなく表彰金として規定化してある
【参考:社会保険審査会裁決 (平.18.9.29裁決)】
5.まとめ
現金支給の永年勤続報奨金は給与所得として課税対象となり、支給の際は所得税を控除する必要があります。
一方、労働保険・社会保険は計算対象外となりますが、社会保険料計算対象外とするためには、就業規則へ表彰規定の記載が必要となります。
永年勤続報奨金は、成績や数値によらず公平に表彰できるため、従業員の不満は生じにくいと思われます。「あと1年で永年勤続報奨金がもらえるからまだやめないでおこう」というような従業員の離職防止やモチベーションアップにもつながるので、退職金制度と比べて取り入れやすい福利厚生の一環として制度の導入を考えてみてはいかがでしょうか。
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加古川・姫路の社会保険労務士は山本社会保険労務士事務所
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